「安原製作所回顧録」か。

割と穏当なタイトルになったみたい。 現在読み中。 意外と歴史読み物的にも面白い。
安原製作所サイトにも出版情報が

【追記】
 で、読んだ。
以下、カギ括弧内は引用ではなくうろ覚えの大意なので、ニュアンスが違っていたらご勘弁下さい。

内容はカメラメーカーとしての安原製作所を回顧することを中心とし、同時に今や歴史の中に消えて行こうとしているフィルムカメラ産業全体を回顧するものとなっています。

 とのことで、
フィルムカメラ産業についての歴史的な総括は、史実としては特に目新しいこともないんだけど、観点がちょっと面白かった。「フィルムカメラはデジカメに取って代わられたのではなくて、社会インフラがデジカメ向きの時代になったのだ」という話は、なるほどというところ。あと、飾っておくだけのカメラマニアが相当お嫌いらしく「デジカメの時代になって、飾っておくだけという人は大分減ったのではないか」「それによって撮られる写真のレベルは、全体に上がったと思う」とか書いてあって、確かにそんな気がすると思った。
 大体においては客観的で冷静な筆致だと思うが、重箱の隅的な所を突つかせて貰うなら、「フィルムカメラで高速連写する人なんてほとんど見たことがない」みたいなコトが書かれていて、そりゃコンタックスで芸術写真撮ってる人はそんなことしないだろうけど、カツオドリが水面にダイブする瞬間の写真が撮れるかどうか?とかそういう写真を撮ってた人間に言わせると、そういう物言いは写真の可能性を狭めるようにしか思えないなー、「そんな機能使わない」という物言いは常にあるけど、技術者の側からそういうコトを言われてしまうのは、なんだか残念な感じがするなー、と思った。 カメラ論、写真論をつらつら見ていると、世の中に「写真っていうのは芸術写真しか存在しない」と思っている人は、結構いるみたいで何とも。

 で、まぁ
より面白いのは、やはり「安原製作所」の裏話で。一式のバックオーダーが長きに渡ったため、「順番待ちで無くなった方が何名かいて、予約金はいかなる理由があっても返さない事になっていたが、さすがにその人達(の遺族)には返した」というようなエピソードは、不謹慎な言いようだが、なかなかイイ話だと思った。中国生産の苦労話も、妙に面白い。



 ネタのつもりで買ったけど、案外面白い本だった。年代的なイメージが湧きにくいので、年表とかつけるとイイんじゃないかと思った。